観察の道具

茂木健一郎氏のブログ記事(2005/04/30:セレンディピティと観察)に次のようなクダリを見つけた。

大学院に入った時、指導教官だった若林健之さんに、科学者というのは何を観察して研究ノートに書くかが全てだと教わった。だから研究ノートには良いものを使え、と言われた。若林さんは、ケンブリッジのMRCに留学していて、その当時からの慣習で黒と赤の背表紙のノートを使っていた。数年後、私自身がケンブリッジに留学すると、みんなこのノートを使っていた。
(中略)
Black n' Redといって、イギリスでは文房具店で普通に手に入れることができる。

「観察」というのは、つまり、自分の主観では用意できないものを外から取り入れる行為である。だとすれば、当然「セレンディピティ」(serendipity)(偶然幸運に出会う能力)と関係する。セレンディピティという概念を思いついたのが、「経験主義」の国、イギリスのHorace Walpoleであることには深い含意がある。自分の思いこみにとらわれて、虚心坦懐に観察することを知らない人にはセレンディピティは訪れない。
cf. 茂木健一郎 クオリア日記: セレンディピティと観察

とりわけ、若林氏の「科学者というのは何を観察して研究ノートに書くかが全て」という言葉に感銘を受けた。研究とは、主題を設定した時点で、その方向性が決定してしまう。そのため、主題を設定する作業は、できるだけ慎重に、可能な限りの時間を費やして行わなければならない。そして、一度、主題を設定したならば、後は、常にその問題を考え続ける。そうして、ひとつの研究が完成するのだと思う。

ともあれ、観察記録を書き留めるノートを用意しようと考えて、Black n' Redと同じような形態のノートを購入した。MoleskineFolioというシリーズは、A4とA3という利用しやすい企画が素敵。A4のノートを手に入れて、さて、何を書こうかと考え始める前に、この記事を書いている。

これに何を書き込もうかしらん。